抜取検査とは何か?

 ものづくりを考えたときに、付加価値を生み出しワクワク・ドキドキさせる「もの」と生産管理や生産現場の改善につながることとしての「づくり」に分けてみるとすっきりしてきます。

 製品を造って市場に供給するときには、「不良をつくらない」「不良を流さない」などは、品質管理活動の基本です。この活動は、ものづくりにおける「づくり」に該当することは想定できます。工程で品質をつくりこみ、市場へ不良が流出しないようにすることは、品質保証活動において重要な要素です。これを満たすためには検査が必要になります。

 品質保証上の検査の役割は、製品がどのような状態であるかを知るための貴重な情報を提供してくれます。単に製品の良否判定やロットの合格・不合格を判定するだけではなく「フィードバック」検査結果を受けて前工程に情報を戻して「不良をつくらない」ようにしたり、「フィードフォワード」製品のことを知って次工程に知らせて「不良を流さない」という機能を持ち合わせています。これが品質保証上における重要な検査の役割であります。検査は大きく分けて、抜取検査「random inspection」と全数検査「full inspection」に別れます。

抜取検査のメリットとデメリットについて

 全数検査は、検査ロットの全数について、その製品の1つ1つを検査します。全数検査で不良(虫)を完全に取り除ければ、その製品の品質は要求を満たしているということになります。しかし、ネジやナットのように安価で細かい部品(数の多い部品)で時間と費用をかけて全数検査するのは、経済的ではなく、現実的でもありません。

 特に電子部品の寿命試験や、伸銅材の引張試験などのように、その製品を壊したり、製品としての価値が無くなる検査方法では、 全数検査を行うことはできません。このような場合に、製品の中からサンプリングを行い製品特性を把握する抜き取り検査を行ないます。

 抜取り検査は、検査ロットから試料を抜き取って調べて、その結果をロットの判定基準に照合して、そのロットの合否を判定する検査です。

 抜取り検査は、全数検査よりも検査個数が少ないため、検査費用と時間が少なくて済み、経済的であり、現実的です。

 しかし一方でロットからの抜き取りであるため、サンプリングによっては偏った特性を示す場合や検査に合格したロットの中に1つも不良品がないとは断言できず、試料の抜取り具合(数、頻度など)によって、良いロットを悪いロットと判断したり、その逆の場合もあります。このようにそれぞれ特徴があるため、どのように使い分けるかが問題となってくることがあります。抜き取り検査法としてJIS Z 9015が制定されています。

抜取検査体制の作り方

 抜取検査体制の作り方は、簡単には生産者側(売り手)と消費者側(買い手)の立場を考えたうえで設計していかなければなりません。今回は、検査体制を作るうえでの概略について説明したいと思います。

 ものづくりは、一般的に購入材料・部品を調達して加工を行い完成品として出荷することが安定して行われなければなりません。そのため流れの中でそれぞれの工程での出来栄えを確認するために検査体制を整えていきます。例えば、ある工場では、原材料が納入されたとき、不純物が混入していないかどうかを判定するために、(1)受入検査を行ないます。そして、加工工程進行中に、仕掛品(加工途中品)を工場内で検査する(2)工程検査があります。最終工程では市場出荷前の完成品に(3)出荷検査を行います。

 このように抜取検査を検査対象でもって分類する場合は、次のことを考えて作ります。
(1)受入検査は、原材料を調達する買い手の立場で抜き取り、売り手と買い手がお互いに合意した水準以上の品質の製品が納入されていることを確認するために行います。
(2)工程検査は、加工工程進行中に不良品が次工程に流れることを防止したり、安定して加工が進んでいるかなどを確認するために行います。
(3)出荷検査は、生産部門が生産した製品を最終的に品質部門が買い手の立場に立ってチェックする最終出荷検査です。この結果でもって製品が市場に対して保証することになります。また、検査で取り扱う測定データによって分類するとサンプルから得られる情報が計数値(不良数など離散的な数値)である場合は計数値抜取検査、計量値(特性値など連続的な数値)である場合を計量値抜取検査ということになります。確認・分析する方法が変わってきます。

 工程の場所と取り扱うデータが決まれば、次に合格基準の決め方による分類が必要です。
①規準型:良いロットと悪いロットを振り分ける検査の基本機能をベースとした基準。
②調整型:継続して検査にロットが提供される場合に、品質実績によって「なみ検査」「きつい検査」「ゆるい検査」の3種類の検査の厳しさを適用し分ける基準。
③選別型:ロットを抜き取り検査で判定し、もし不合格となった場合には全数を選別することによって検査するアイテム数を最小にしようとする基準。
④連続生産型:連続的に製品が製造される場合に、そのまま適用する基準。

 また、抜き取り検査形式による分類では次の検査があります。
①1回抜き取り検査は、ロットからサンプルを1回抜き取り合格・不合格を判定する。
②2回抜き取り検査は、第1サンプルを抜き取り判定、ここで判定が付かなかったら第2のサンプルを抜き取り双方で判定する。
③多回抜き取り検査は、2回抜き取り検査の回数をより多くしたもの。
④逐次抜き取り検査は、多回抜き取り検査をさらに合否判定できるまで細かくしたもの。

 このように抜取検査の種類を組み合わせることで検査体制を作っていきます。この辺りは実際にキッチリと運用されている工場はあまり多くないかも知れません。しっかり勉強していきたいですね。

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経営総合プロデューサー 西本文雄(にしもと ふみお)

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。8年間で500社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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